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子供と子供の権利

 

 

人類最初の男性アダムと最初の女性イブは、この世における人間の存在という歴史の幕開けに一緒に創造された。このことは結婚がごく自然のことであることを示唆している。この自然な状態において最も重要な目的は生殖である。次世代の育成以外の理由を目的とした結婚は一時的な娯楽か冒険のようなものにすぎない。そのような結婚のもとでこの世に生を受けた子供は、不幸にも、移ろいやすい感情の産物ではあるまいか。

ある国家が国家として持続していくかどうかはひとえに若い世代の教育に関わってくる。子供たちが国民としての精神に目覚め、その自覚を持ち、心が磨かれるかどうかにかかっているのである。未来を安心して託せる完成された世代を育て上げることができない国家の将来は暗闇に包まれている。確かな世代を育む重要な責任が両親に帰することに疑いを挟む余地はないであろう。

世代は、時とともに新しきが訪れ古きが去る。精神的に円熟に達した人々は「人間」と見なされるにふさわしい。一方、教育が低水準にとどまっているために精神的機能を発達させることができない人々は、人間と呼ばれるにほとんど値しない。アダムの子孫といえども、奇妙な生物という以上の何ものでもない。そしてその両親にとっては重荷であり、そのような人々を養育してしまった不幸を背負い込んだにほかならない。

木は適宜に枝を剪定してあげれば、実を結び成長も促進される。もし枝を刈ってやらなければ、木はしなび成長も阻害される。この事実を考えれば、驚くべき才能と能力を秘めているすべての人間に、少なくとも一本の木になされるように、手をかけ世話をしてあげるべきではなかろうか。

この世に子供を送り出すあなたたちには、彼らを天をも越えた世界に達するよう育てあげる責任がある。身体面の健康に気をつけ面倒を見るのと同様に、子供たちの精神面での生活にも注意を払って世話しなさい。どうか、哀れみをかけ、無力で無垢な子供たちを守ってあげてほしい。彼らの人生がなすがまま無為に終わらないように。

子供たちが己の能力を伸ばし自身や社会に役立てられるように、親が仕向け手を貸してあげれば、国家に新しい堅固な柱を建設したことになる。反対に子供たちの人間的な感情を培ってあげなければ、社会に蠍を解き放ったも同然となる。

親は、子供を教育し徳を備えさせるよう努めている限りにおいて子供に対する権利を有する。しかしもし子供を無視していたらそのような権利は得られない。そもそも一体、自分たちの子供を邪悪で下品なままに放置し、人間らしさを捨て去るよう仕向けるような親を何と呼べるだろうか?

人類の存続という観点からみた一人の子供の意義は、一粒の種が森の持続的な成長や増殖につながるのと同様の意味合いに位置づけられます。子供をないがしろにする人々は徐々に衰退の途を辿るでしょう。また子供を外来の文化の只中に放置する人々は、あえて自分たちのアイデンティティー喪失を企てているようなものだと言えます。

子供たちも30~40年後には社会の最も精力的かつ生産的な役割を担う地位を占めています。幼い子供たちを顧みない人々は、その軽視している存在が自分たちの帰属する社会の生命にとっていかに重要な要素であるかを熟考してみるべきでしょう。そうすれば身震いせずにはいられないことでしょう。

今日の世代が行っている不道徳、一部官僚の無能さ、そしてその他数々の社会問題は30年前の社会状況や当時の支配層エリートから直接もたらされた結果なのです。さらに付け加えれば、今日の若い世代の教育を担う人々は、今から30年後の社会で顕現するであろう不道徳と美徳に責任を有すると言えます。
自分たちの未来が確実で安定したものであることを望むならば、身辺にある諸問題の解決に力を注ぐのと同程度のエネルギーを子育てに傾けるべきです。各種問題解決に投じられたエネルギーは時に無駄に終わることもあり得ますが、若い世代の育成を目的として注がれる労力はたとえそれが何であれ、彼らが人間性を勝ち得るのに役立つのです。そしてそのような若者は尽きることのない収入源のような存在となるのです。

この社会にいる道を踏み外した人や悲惨な状態にある人たち‐麻薬中毒者やアルコール中毒者、放蕩生活を送る人など‐も、かつては子供でした。しかし適切な教育を与えられないままここまできてしまったのです。私たちに続く道を将来歩んでいく人々をどのような人物に養成していくかについて、私たちは十分に認識しているでしょうか?

将来において優勢に立つのは、自然科学やテクノロジーが発達した社会というよりも、むしろその点で多少劣っていても家族制度や若者の教育にきめ細かい注意を払う社会なのです。家族制度や若者の教育をないがしろにする社会は、情け容赦ない時の推移に押しつぶされてしまうでしょう。



 

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